子どものころ、何かをしていると、だいたい最後はこの一言で終わった。
「体に悪いから、やめなさい」。
夜更かし、アイスの食べすぎ、テレビを近くで見ること。
理由はよく分からないけど、とにかく“体に悪い”と言われると、それ以上は聞けなかった。
今思えば、あの言葉は説明というより、会話の終わらせ方だった気がする。
細かい理屈は分からないし、調べる手段もない。
でも、子どもを止めなきゃいけない場面は山ほどある。
だから「体に悪い」が、いちばん無難で、いちばん強い言葉だった。
不思議なのは、その言葉を言われた側も、なんとなく納得していたことだ。
本当に悪いのかどうかは分からない。
でも「そういうものか」と、一度飲み込んでいた。
今は、理由はいくらでも説明できる。
データも論文も、検索すればすぐ出てくる。
その代わり、「とりあえずやめておこう」が、言いづらくなった気もする。
あの頃の「体に悪いから」は、正しかったかどうかより、
止める側も、止められる側も、これ以上こじれないための合言葉だったのかもしれない。
正解かどうかは、今でも分からない。
でも、あの一言で片づいていた空気を、たまに思い出すことがある。
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