子どもの頃、
おじいちゃんは、
日曜日になるとプロレス中継を観ていた。
テレビの前に座って、
特別に声を出すわけでもなく、
じっと画面を見ている。
試合が始まると、
表情が少し変わる。
勝ち負けよりも、
ぶつかり合う場面に、
目が向いていた気がする。
詳しいルールを、
教えてもらったことはない。
誰が強いとか、
何がすごいとかも、
あまり説明されなかった。
おじいちゃんは、
もともと無口な人だった。
自分のことを語ることも、
多くはなかった。
あるとき、
母から聞いたことがある。
「おじいちゃんは、
プロレス中継を観て
元気をもらっているのよ」と。
その言葉を聞いて、
少し腑に落ちた。
試合の内容よりも、
画面の中の力強さを、
静かに受け取っていたのかもしれない。
おじいちゃんが
プロレス中継を観ていた姿は、
内容よりも、
その後の空気と一緒に残っている。
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