昔、居間に置いてあった電話機が鳴ると、
家族全員が一斉に反応していた。
誰が出るかを決めていたわけでもなく、
気づいた人が受話器を取る、
それだけのことだった。
今考えると、
まるで会社の事務所みたいだな、と
ふと思い出して、笑ってしまう。
誰からの電話かも分からないのに、
家の空気が少し動いて、
用件が終わるまで、
なんとなくみんなが待っていた。
今は、
電話はそれぞれのポケットの中にあって、
誰かの着信に、
家族全員が反応することはほとんどない。
でもあの頃は、
電話ひとつで、
家族が同じ方向を向く時間が、
自然に生まれていた。
不便だったのかもしれないけど、
あの感じは、
悪くなかった気がしている。
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