昔は、
電話に出られなかっただけで、
その用事自体が消えてしまうことが、わりとあった。
家にいなければ電話は鳴りっぱなしで、
留守電が入っていなければ、
何があったのかも分からない。
結果として、
その日は何も起きなかったことになる。
あとで理由を聞かれることもなく、
「なんで出なかったの?」と
責められる感じもなかった。
連絡がつかなかったなら、
それで終わり、という空気だった。
今は、
電話に出なければメッセージが来て、
既読がついて、
用事は形を変えて残り続ける。
でも昔は、
連絡が取れなかった時間も含めて、
一日の流れだった。
起きなかった用事は、
なかったことになり、
誰のせいにもならず、
静かに消えていく。
用事が消える、という感覚は、
無責任というより、
生活にあった余白だったのかもしれない。
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