磯子の工業地帯と聞くと、
今はもう、そこまで強い匂いはしないらしい。
でも、昔は違った。
はっきりとした理由は分からないけれど、
大豆油のような、独特の香りが、
あたり一帯に立ち込めていた記憶がある。
幼稚園の頃、
磯子のサッカー教室に通っていた。
親と電車で向かう途中、
窓の外の景色と一緒に、
その匂いが流れ込んできた。
走る練習があまり好きじゃなかった。
それもあって、
その場所に向かう時間自体が、
少し憂うつだった気がする。
グラウンドのことよりも、
練習の内容よりも、
なぜか強く残っているのは、
街の匂いと、向かう途中の気分だ。
今はもう、
同じ匂いはしないかもしれない。
でも、あの頃の磯子には、
確かに、ああいう空気があった。
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