福浦の工業団地に営業で通っていた頃、
文明堂のカステラ工場があった。
工場の中に入ったわけじゃない。
売店で、お土産用のカステラを買っただけ。
普段、カステラを食べることはほとんどない。
誰かに渡すもの、という印象のほうが強い。
でもその日は、
なんとなく自分用に一つ買って、
車に戻った。
エンジンを切って、
駐車場で、ひとり。
箱を開けて、そのまま食べた。
特別なことは何もない。
でも、甘さがちょうどよくて、
仕事の合間に、気持ちが少し緩んだ。
福浦の工業団地って、
こういう時間が似合う場所だった。
忙しいけど、慌ただしすぎない。
ちゃんと働いて、
ちゃんと休む人が多い街。
文明堂のカステラは、
そんな一日の真ん中で、
少しだけ立ち止まらせてくれた。
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