母親は、箱を捨てなかった。
お菓子の箱も、
海苔の箱も、
ジャムの箱も。
「いつか、何かに使うでしょ」
そう言って取っておくから、
家の中には、
いろいろな箱が残っていた。
実際、
輪ゴムを入れたり、
書類を入れたり、
細かい物をまとめたりして、
箱はそれなりに役に立っていた。
でも、
使われる箱より、
使われないままの箱のほうが、
たぶん多かった。
それでも、
捨てる理由はなくて、
置いておく理由だけは、
いつもちゃんとあった。
今は、
箱が増えると、
少し気になるようになったけれど、
あの「いつか使う」という感覚は、
悪いものでもなかった気がする。
役に立つかどうかより、
すぐに捨てない、
という判断が、
当たり前だった時代の話。
コメント