昔は、
家のどこかに、分厚い電話帳が置いてあった。
棚の下だったり、
電話の横だったり。
特別に大事に扱うものでもなく、
でも、ないと少し困る存在だった。
誰かに電話をかけるときは、
まずそれを開く。
目的の名前を探して、
指で行をなぞりながら番号を見る。
知らない家の番号も、
同じ紙の中に並んでいる。
それを不思議だと思うことは、
あまりなかった。
電話帳には、
家の数だけ名前が載っていて、
それぞれの暮らしが、
一冊にまとめられている感じがあった。
番号を間違えてかけてしまうこともあったし、
知らない家につながることもあった。
でも、それで大きな問題になることは、
ほとんどなかった。
今は、
番号は画面の中にあって、
探すというより、
呼び出すものになった。
昔が良かった、という話ではない。
ただ、
分厚い電話帳をめくっていた頃は、
連絡先が、
もう少し生活の一部として、
雑にそこにあった気がする。
あの重さと紙の感じは、
人とつながることを、
少しだけ身近にしていたのかもしれない。
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