子どもの頃、
駅の改札で、
駅員さんが切符を切る音が好きだった。
カチン、カチン、という
あの短い音。
リズムよく続いていくのを、
少し離れたところから見ていた。
切符を差し出す大人の手。
迷いなく入れて、
同じ動きで返ってくる。
自分の番が近づくと、
なぜか背中が伸びる。
うまく出せるか、
ちゃんと受け取れるか。
特別な用事があるわけでもないのに、
改札を通るだけで、
少しイベントみたいだった。
駅員さんの顔を見るというより、
手元の動きと音を見ていた気がする。
切符が切られていく。
それだけのことなのに、
通過した感じがちゃんと残った。
今は、
音も動きも、
意識しなくても通れてしまう。
昔が良かった、という話ではない。
ただ、
切符を切る音を待っていた時間には、
順番が回ってくることを、
静かに楽しむ余裕があった気がする。
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