昔、友達の家に電話をかけると、
ほとんどの場合、最初に出るのは本人じゃなかった。
お父さんか、お母さん。
たまにおばあちゃん。
名前を名乗って、
「◯◯くん、いますか」と聞くまでの数秒が、
やけに長く感じた。
声のトーンは自然か。
言葉遣いは大丈夫か。
変な沈黙を作っていないか。
まだ何も悪いことをしていないのに、
少しだけ背筋が伸びる。
親に用件を聞かれることもあるし、
「今いないよ」と言われたら、
それ以上は踏み込めなかった。
いつ帰るのか。
あとで折り返してもいいのか。
そんなことを聞くのは、
なんとなく失礼な気がした。
だから多くの場合、
「分かりました」と言って電話を切る。
それで用事が終わることも、
わりと普通だった。
今は、
本人に直接つながるのが当たり前で、
親を経由することはほとんどない。
でもあの頃は、
誰かに連絡を取るだけで、
その人の家の空気に一度触れてから、
用事が始まっていた。
あの気まずさは、
面倒でもあり、
同時に、距離を測る時間でもあったのかもしれない。
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